東西南北 春夏秋冬 ヨーロッパの旅

チェスターの週末(イギリス)

06. チェスター大聖堂に入る

チェスター大聖堂の正面

さて、いよいよチェスターの観光客の多くを集めるチェスター大聖堂だ。そのチェスター大聖堂にはなかなか複雑な歴史があるんだけど、下の画像にある正面にも、大聖堂の歴史が反映しているらしい。

チェスター大聖堂の正面(イギリス)

こちらから見て正面の左側(北側)にある塔の下部には、11世紀のノルマン時代の修道院の建物の遺構が残されているんだそうな。正面右側(南側)の塔は西暦1508年に工事が始まったんだけど、西暦1538年には工事は中断しちゃった。

イングランド王ヘンリー8世による修道院解散のあおりを受けたんだそうな。というのも、当時のこの建物は大聖堂ではなく、修道院だったらしい。その後、西暦1541年にチェスター大聖堂となって今に至っている。

ところで、上の画像のチェスター大聖堂の正面ファサードの上に、ちょっとだけ塔が見えているのがわかるかな。その塔を見るために、大聖堂の横に回ってみよう。

チェスター大聖堂の塔は未完成だった

チェスター大聖堂を横から見上げたのが下の画像なんだ。やっぱりこの大聖堂の塔は低いよね。

チェスター大聖堂を脇から見上げた(イギリス)

資料によれば、チェスター大聖堂の塔の高さは 39メートルしかないらしい。例えば、イングランド南部にあるカンタベリー大聖堂の塔の高さは 72メートル。ヨークにあるヨーク・ミンスター(大聖堂)の塔の高さは 60メートルあるらしい。英国国教会でも首位を争う大聖堂と比較しちゃいかんとはわかっているけど。

でも、それらに比べてチェスター大聖堂の塔は低いし、建物全体との対比のバランスも悪いような気がするよね。実を言えば、この塔は一度も完成したことが無いらしい。11世紀のノルマン時代の修道院の遺構を活かしつつ、今の大聖堂の建物を建てる工事が始まったのが西暦1283年なんだけどね。

西暦1375年にチェスターで黒死病(西暦1347年にマルセイユに上陸した黒死病が名高いけど)が猛威をふるい、工事が中断されたんだそうな。それが再開されたのが西暦1485年のこと。そして上にも書いたイングランド王ヘンリー8世による修道院解散だ。そんなこんなに翻弄されて、このチェスター大聖堂の塔は完成しなかったんだろうね。

19世紀のチェスター大聖堂修復

上の画像でもわかるように、チェスター大聖堂の建物は赤っぽく見えるでしょ。この建物は赤色砂岩でできているんだそうな。その赤色砂岩は彫刻などはしやすいけど、風雨によって容易に侵食され、しかも汚染にも弱いんだそうな。確かに上の画像でも汚れているように見えるよね。

時は流れて19世紀、大英帝国に君臨したヴィクトリア女王の時代、このチェスター大聖堂では本格的な修復が行われたんだそうな。その際に未完成の部分にも手が加えられたらしい。

ところが、その修復に批判と議論が巻き起こった。例えば上の画像を見て欲しいんだけど、塔の上の部分に小塔が見えるでしょ。あの小塔は元々は無かったもの。19世紀の修復の際に未完成の塔の上に付け加えられたんだそうな。そうなるともう「修復」じゃなくて「改築」でしょという批判と議論があったらしい。なるほど。

とはいえ、このチェスター大聖堂の中には長い歴史を反映した様々なものが残っているんだ。前置きはこれくらいにして、大聖堂の中に入ろう。

チェスター大聖堂の内部

というわけで、ようやくチェスター大聖堂の中に入り、振り返って撮影したのが下の画像なんだ。

チェスター大聖堂内部の身廊部分(イギリス)

上の画像の中央下に見えているのが、西側に面している正面ファサードの入り口だね。その上の大きな窓には見事なステンド・グラスがあるんだけど、20世紀の作品なんだそうな。

先にも書いたけど、イギリスの清教徒革命の際、チェスターは王党派の側で戦い、西暦1644年から籠城していた。でも、西暦1646年に議会派の軍に降伏し、開城したわけだ。その混乱の際に、議会派の兵士たちによってチェスター大聖堂のステンド・グラスなどは殆ど破壊されてしまった。というわけで、今のチェスター大聖堂のステンド・グラスの多くは19世紀や20世紀のものなんだそうな。

ちなみに、ヨークも同様に清教徒革命の際には王党派の側に立って籠城し、西暦1644年に議会派の軍に降伏して開城した。ところが、議会派の指揮官の一人であるトマス・フェアファックスがヨーク・ミンスター(大聖堂)を兵士たちによる破壊から守ったらしい。残念ながらチェスターを包囲した議会派の軍の中には、トマス・フェアファックスはいなかったんだね。


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