東西南北 春夏秋冬 ヨーロッパの旅

旅行記 「春のスペイン」

トレド、マドリッド、セゴビアを周り、歴史とバルと闘牛を楽しんだ

11. マドリッドで闘牛を見た -2.

マタドール 主役の闘牛士が再び登場

脇役の闘牛士ピカドールとバンデリジェロが下がれば、次は主役の闘牛士マタドールが再び登場する。今度はムレタと呼ばれる赤い布を手に持っている。最初に登場した際に持っていたカパも赤い布なんだけど、このムレタの方が小さいんだそうな。

スペインの首都マドリッドのラス・ヴェンタス闘牛場で牛をあしらう闘牛士 マタドール

この小さな赤い布ムレタを手に牛をあしらう。そこに主役の闘牛士マタドールの美学と技量が見えるんだそうな。如何に自分の軸足を動かすことなく、いきりたつ牛を自在に操るか。

マタドールは牛の真正面に立ち、牛を挑発し、自分と牛との間にムレタを垂らす。その赤いムレタに幻惑され、牛は突進する。大きな角で赤い布を宙に放り上げようとする。でも、むなしく角は空を切り、巨体はマタドールの脇をかすめていくんだ。

右手に剣を持ち、牛に向かう闘牛士 マタドール

ピカドールの槍やバンデリジェロの銛に突かれた傷からの出血、そしてマタドールの赤いムレタの惑わされたむなしい突撃の為にさすがの牛も疲れてきたらしい。

スペインの首都マドリッドのラス・ヴェンタス闘牛場で牛に向かう闘牛士 マタドールの右手に剣

気がつけば、さっきまで闘牛士マタドールの右手に会った赤い布は左手に移っている。そして右手には剣。いよいよ「マタル(殺す)」というのだろうか。「マタドール(殺し屋)」が牛を仕留める時が来たんだろうか。

闘牛士マタドールが牛を仕留める

左手に持ち替えた赤い布ムレタで牛をあしらい、タイミングを計って剣を構える。ピカドールの槍のせいで背中の筋肉を傷つけられた牛の頭は下がっている。頭を下げた牛の肩甲骨と背骨との間には、わずかに隙間が生じている。そこに剣を突き立てた闘牛士マタドール。牛の突進もあり、剣は深々と突き刺さる。

スペインの首都マドリッドのラス・ヴェンタス闘牛場で牛にとどめをさす闘牛士 マタドール

この闘牛士マタドールの剣はわずかに下に向かって湾曲しているんだそうな。その湾曲と牛の突進によって、剣は一気に牛の心臓を貫くらしい。


倒れる牛、見つめる闘牛士たち

一瞬の間。静寂。立ち止まった牛がやがて崩れ落ちた。大きな闘牛場に集まった観客たちの喝采。牛を見つめる闘牛士たち。これが初めて見たスペインの闘牛だった。

スペインの首都マドリッドのラス・ヴェンタス闘牛場で倒した牛を見つめる闘牛士 マタドール

いつもうまくいくわけじゃない。実際に今日の闘牛の2番目の対決の際には、荒れ狂う牛たちが闘牛士の助手たちを蹴散らし、更にはピカドールを乗せた馬に突撃をかけ、その馬を倒してしまったんだ。結局、その対決はそこまでで中断されてしまった。

他にも牛が登場して30分以内に倒すことができなければ、その瞬間にその対決は中断となるんだそうな。その対決の主役となる闘牛士マタドールは、牛と対決する権利を奪われ、場合によっては留置されたり、損害賠償請求を受けることもあるらしい。スペインの闘牛は闘牛士たちにとっても厳しいんだね。

でも、いくら厳しくても闘牛士が殺されることはないからね。他方の牛は殺されてしまう。闘牛に登場するのは4歳の雄牛なんだけど、そんな闘牛で殺された牛の肉を売る店もあるんだそうな。但し、とっても堅くて美味いものじゃないらしい。

そんな牛の命を奪う闘牛に対して、スペインでも逆風が吹いているんだそうな。今ではスペイン北東部のバルセロナを中心とするカタルーニャ地方では闘牛が禁止されてしまった。またスペイン全土でテレビでの闘牛の生中継も無くなったんだそうな。牛の命を奪うことが動物愛護に反しているということもある。でも、闘牛よりもサッカーの人気の方が高くなったということもあるらしいけどね。

スペイン最初のプロの闘牛士が西暦1726年に誕生してから300年近い歴史を持つ闘牛が消え去るのは寂しいね。牛の命を奪うことは如何なものかとは思うけど、このスペイン独特の美学を貫く文化は守れないものかな。フランス南部プロヴァンス地方アルルニームのように牛の命を奪わない闘牛でスペインの伝統を守ることが出来るかどうかは微妙なんだけど。

闘牛士たちの危険

ここで一つ訂正しなければならないことがある。いくら厳しくても闘牛士が殺されることはない ・・・ と上に書いたんだけど、それは間違いだった。西暦2016年7月のことなんだけど、スペインのアラゴンで行われた闘牛において、牛の角に突かれた闘牛士が亡くなったらしい。6年の経験のある29歳の闘牛士だったそうな。

西暦2017年6月にも同様の事件があった。南仏で行われていた闘牛祭りに参加していたスペインの闘牛士が亡くなったらしい。牛に立ち向かっていた彼はマントに足がひっかかってよろめいた。そこに突進してきた牛の角が突き刺さり、彼の肺にまで達したとか。動物虐待の観点から闘牛に対する風当たりが強まる中、闘牛士たちの命の危険も取り上げられるのかもしれないね。


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