東西南北 春夏秋冬 ヨーロッパの旅

ロンドンから四国へ ... 「父を送る旅」

2000年11月


5. 故郷を後に

父の墓参りを終え、駅に向かう。

小さな田舎の駅で列車を待つ。向こう側のホームの片隅のベンチから目が離れない。

ベンチ

去年の秋。東京出張のためにロンドンから帰国した私は、週末を利用して帰省した。短い休暇を両親と過ごした私が東京へ向かう日、両親は駅まで見送りに来た。

上りの列車に乗るために階段を登り、向こう側のホームへ。ふりかえると父がいない。反対側のホームのベンチに腰を降ろし、私の方を見ていた父。病気のために足腰が弱っていた父は、階段を登ることも出来なかったのだ。

父の座るベンチに戻ろうか。躊躇する私を思い切らせるように列車がやってきた。父から見えるようにと列車の窓際に立つ私。あの時、父には私の姿が見えていただろうか。去年の11月のこと。

そして、今年の10月。ロンドンから帰国したばかりの私は、故郷で1週間の休暇を過ごした。東京へ戻る日、父は病院にいた。駅で私を見送ったのは母だけ。車窓からは、いつもと同じ田舎の風景。涙が止まらなかった。二度と父と会うことが出来ない予感がしたのだ。

そして、今日も列車に乗る。涙は出ない。20年以上も病気と闘った父の最期の顔が安らかだったから。まるで眠るような表情だったから。今は安らかにすごしていると信じている。

故郷

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