東西南北 春夏秋冬 ヨーロッパの旅

ロンドンから四国へ ... 「父を送る旅」

2000年11月


2000年11月17日(金曜日)
3. 海辺にて

結局、故郷の町に帰り着いた時は、水曜日の夜10時半になっていた。通夜にも間に合わなかった。

しかし、大変なのはそれからだ。親戚や地元の人々の協力の下に準備を整え、喪主として葬儀を済ませる。それから財産の整理、母のための年金などの手続など。本を買い込み、資料を読み、連日深夜まで机に向かっていた。

海 葬儀から1週間が過ぎた金曜日、母と一緒に海辺の小さな村へ行った。

漁船の浮かぶ小さな漁港のコンクリートに、母と並んで腰を降ろし海を眺める。

もうすぐ冬だと言うのに、郷里の海の太陽は暖かい。地中海の島を思わせる景色を眺めながら、母と二人で缶コーヒーを飲み、ミカンを食べた。

俺が小学生の頃だよねえ。よくキャンプに行ったよねえ。毎年、夏になるとオヤジが連れて行ってくれた。俺と弟は朝から晩まで海で遊んどったわなあ。やけど、俺より10歳も若い妹は、キャンプのことなんか覚えとらんやろうなあ。かわいそうやなあ。

やけど、中学生になった頃から、俺は反抗期になってしもて、オヤジとは殆ど口をきかんようになってしもた。高校生になってオヤジが入院しても、見舞いにも行かんかった。寂しかったやろなあ。オヤジに悪いことをしたと、よお思うわ。

漁村での用を済ませた私たちは、車に乗り込み海辺の斜面の道を登る。海を見渡すことのできる山の中腹で車を停めた。海岸線の入り組んだ南予(愛媛県南部)を見渡す。

桜 ふと見上げれば、桜の木には小さな小さな芽(右の画像)。

もう次の春の準備をしているんだ。まだ冬も来ていないというのにねえ。

そういえば、俺が花の写真を撮るようになったのも、去年の秋から病状の進んだオヤジを励ますためだった。当時住んでいたロンドンのマンションの近くで春の予兆を見つけるたびに、デジカメで撮影してはオヤジに手紙を書いていた。

木々の新芽、白いユキワリソウの花、桜に似たアーモンドの花。どれも春の訪れと共に周囲に姿を見せた生命の再生の象徴だった。とにかく父に希望を持ってほしかった。

俺のサイトに旅行記があるのも、ある意味ではオヤジのおかげだ。旅に出るたびに俺は写真と旅行記をオヤジに送り続けていた。だから、旅行の詳しい記録が手許に残っている。それを参考にして、このサイトの旅のページを更新しているというわけだ。


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