ワインの村のこだわりレストラン
ジーンズでもいいかな ??
女将さんの言葉に従い、よそ行きの格好でホテルを出発する。同じ村の中にあるレストランまでは歩いて 10 分だ。
不気味な階段 さて、レストランの玄関に立っても、人の気配が感じられない。まだ開店していないのだろうか。と思いつつも、せっかく来たのだからドアを開けてみる。地下へ下りる階段があった。
階段の途中には、ワイン作りの様子を再現した部屋がいくつかある。樽を作っている様子やビンにワインを詰めている様子。よく出来て入るのだが、薄暗い部屋のリアルな人形は不気味なものだ。しかも、それが鉄格子の向こう側なのだから、更に気味が悪い。 ようやくレストラン ワイン・セラーの奥で見つけたドア開く。そこがレストランだ。階段を下りるうちに心配になっていたのだが、レストランの内装は、古いワイン・セラーを活かしながらも、モダンなデザインになっている。 私たちを迎えてくれたのは、初老の紳士。どう見ても店の主だ。その横には兵隊のようにきびきびした動きの若者。彼が私たちをテーブルに案内してくれた。 ダイニング・ルームに向かう通路の台の上には、見事なキノコが山盛りのカゴが置いてある。ふむふむ。あのキノコは大事だと私の直感が教えてくれた。 シャンベルタン 私たちは今、シャンベルタンの村にいる。昼はシャンベルタンのブドウ畑を歩いてきたところなのだ。当然ながら、今夜のワインはブルゴーニュを代表する赤ワイン 「シャンベルタン」に決まっている。 どのシャンベルタンにするかを考えるために、ワイン・リストを読む。店のリストに載っているのは、この村のワインのみ。しかも、シャンベルタンやクロ・ド・ベーズなどの大物が数種類だけだ。 そして、私が選んだのは、家内が生まれた年のシャンベルタン。まさか、そんなワインを飲めるとは思わなかった。飲む前から感激である。
店主と相談 時間が早いせいか、店の客は私たちだけ。店主と思われる初老の紳士も、こまめに私たちの世話を焼いてくれる。そこで彼にお願いをしてみた。ワインだけは決めた。あとは料理を選ぶだけなんだけど、私たちが選んだシャンベルタンに合う料理を選んでくれませんか ?? 店主は家内と一緒にメニューを見ながら、家内のために料理を選んでくれた。もちろん、私も二人が選んだ料理と同じものを注文した。 緊張のテイスティング キビキビとした若者が、私たちのワインを持って来て私に見せる。薄汚いボトルに白いマジックでワインの名前とヴィンテージが書いてあるだけだ。信じるしかないじゃないか。それにしてもエチケットも何も貼ってないというのも面白い。産地ならではのボトルである。(偽物かもしれないけど、 ..... 。) コルクを抜いて、しばし安静にしておく。これだけ古いワインでありながら、デカンタをしないというのが面白い。 やがて再び姿を見せた若者がワインを私のグラスに注ぐ。なるほど、ワインの本で読んだとおりに、ワインの縁は茶色だ。これが「熟成」したワインの色なんだ。
と、感心している場合ではない。若者は私がテイスティングするのを待っている。この私がこのワインをテイスティングするの ?!?!
みんなアッチを向いていてくれよ !! と、思いながらもテイスティング。色はさっき書いたとおりだ。香りは意外にも軽い。ひょっとすると既に衰え始めているのかと思いながら、グラスを口に運ぶ。いやいや、味はまだまだ「力強い」。(たぶん、こういう味を「力強い」と言うんだろうな。) さて儀式も終わった。さすがにブルゴーニュの誇るワインとなると、飲む前に飲まれてしまう。そんな緊張感も楽しいんだけどね。ともかく、今からは飲んで食べるだけだ。
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自慢の料理 最初の料理はキノコ。単にニンニクとオリーブ・オイルで炒めただけのキノコ。しかし、ダイニング・ルームに入るときに、私の目に止まったキノコだ。料理を選ぶとき、籠に入ったままのキノコを店主が持って来て、「取れたてだけど食うか ??」と尋ねた。もちろん食べるに決まっている。案の定、美味かった。 お次はエスカルゴ。実は私たちは一昨日も昨日もエスカルゴを食べている。今日は勘弁してくれ !! しかし、店主は譲らない。どうしても食べろというのだ。そこまで彼が言うならば、というわけで食べることにした一品。 そのエスカルゴを一口食べた途端に納得。なるほど、美味い。一昨日も昨日も食べているだけに、このエスカルゴの美味さがわかる。臭い消しのハーブの入ったソースなんかは使っていない。そんなものを必要としない材料を使っているのだ。ガンコ親父が譲らなかったわけがわかった。彼の自身の一品だったわけだ。 今夜の三品目はチキンの赤ワイン煮。これは家内が食べたがった料理。店主も「まあ、よかろう。」という感じで認めたもの。私たちには少々味が濃すぎた。しかし、今にして思えば、あの濃い味つけは、ワインに負けないようにしてやろうという気配りだったかもしれない。(考えすぎかな ??) チーズを食べて、最後にデザート。生クリームのババロアは、思ったよりも軽い風味で悪くない。グレープ・フルーツの苦味の有るソースが、さわやかである。しかし、なんといってもリンゴのタルトが最高。私がウイーンで食べたリンゴのタルトよりも間違いなく美味い。コーヒーでデザートを締めくくり、今夜のお代をすませる。 1,650 フラン( 3 万 2 千円)なり。それが高いと思えないディナーだった。 どうしてミシュランの星がないんだ ?? 村の道を歩いてホテルに向かう。今夜のレストランのことを考える。どうして、あの店にミシュランの星がないのだろうか ?? 二つ星はともかく、一つは星が付いてもおかしくはない。 たとえば、料理の種類が少ないとか。そろえてあるワインが、村のものしかないとか。きっとそんなところだろうと推測する。 しかし、あの店の客にはミシュランの判断基準は関係ない。このジュヴレ・シャンベルタンの村へ来て、ボルドーのワインを飲む奴は馬鹿だ。この店で、地中海産のカジキマグロを注文する奴もいない。料理もワインも片寄っていて結構。そんな料理とワインを楽しむために、この村に来て、あの店に行くのだから。 初老の店主も、ミシュランが何を言おうと関係なく、取れたてのキノコや近くの森のエスカルゴを出し、幼馴染みの農夫のブドウ畑のワインを出す。自分が 「美味い !! 」と思うものを出すだけのことなのだ。 (ジュヴレ・シャンベルタンを含むブルゴーニュの旅については、旅のページ 「初秋のブルゴーニュ」 を読んでくださいね。)
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